春の嵐
天気が悪いので仕事が休みになりました。仕事の内容が天気に左右される訳ではなくて、従業員がみんなマイカー通勤で天気が荒れると危険ということで、前日夜、会社から連絡があったのです。自治体のコミュニティバスも運休と有線でお知らせが来てました。
実は前日も大荒れの天気予報でしたが、どうしてもはずせない用があって休みを取って出かけていました。お話を聞いた偉い人は病み上がりで声が枯れててCMの某レスラーみたいでしたお気の毒様です。もう一人の偉い人はほぼ初対面でしたが自分語りをしながら感極まってる様子で…聞いてる方は困惑しました。わたし、顔に出てなかっただろうか…気を遣いすぎて疲れました。
その後カーラジオで天気概況を聴きながら、追いかけて来る「大荒れ」を振り切るように帰ってきました。大したことなかったなーなんて、田舎に着いたら、風も雨も雪も降ってなくてケロッと晴れていたけど、大荒れだった痕跡はありました。すぐに着替えて休む間も無く後片付けをしました。疲れた。疲れていたのに深夜の暴風が怖くてあまり眠れませんでした。次の日が休みで良かった。
だからということでもないのですが、臨時休暇はじっとしていました。随分前に買ったこれを見ました。
忌野清志郎 LIVE at SPACE SHOWER TV~THE KING OF ROCK SHOW~ [DVD]
- 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: DVD
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大好き。でも残念ながらソロのライブは見たことがなかったのです。RCは数回、タイマーズを一度だけ見ました。この方のDVDはたくさん出てますけど、どれか一つ、というならこれオススメです。毎年命日近くなるとしっかり特番を組んでくださるスペースシャワーTVさんの愛を感じます。褒めすぎ?自分の好きな「わかってもらえるさ」が入っているというのもポイント高いんですがそれだけじゃなくて、コンディションのいいのが揃ってるなーという感じです。
アイルランドの音楽映画
アメリカでわずか2館の公開から口コミで動員数を増やし、最終的には140館での上映となった話題のラブストーリー。ダブリンの街角で出会ったストリート・ミュージシャンと音楽の才能を持つチェコ移民の女性が、音楽を通して惹(ひ)かれ合っていく様を描く。アイルランドの実力派バンド、ザ・フレイムスのフロントマン、グレン・ハンサードが主人公の男を演じ、同バンドの元ベーシスト、ジョン・カーニーが監督。男女のドラマを音楽に乗せて展開させる、ロマンチックな作品に仕上がっている。(シネマトゥデイ)
アイルランドが舞台の音楽映画。GYAO!無料配信だったので暇つぶしのつもりで見てみました。
なんの期待も予備知識もないまま見始めたのですが最初のうちは「ザ・ノンフィクション」とか「ドキュメント72時間」を見ているような感じでした。惹かれ合うとかロマンチックとか、言葉から受けるイメージよりずっと地味。
ONCE たった一度の出会い
二人は、愛情と友情の境目を行ったり来たりします。語り合い、セッションしているうちに「この人とは誰よりも分かり合える」と気付いています。でも、それと、二人のつながりがずっと続くかどうかっていうことはまた別な話なんですね。悪い終わり方じゃなかったですよ。最後の優しさは、相手を一番理解しているからこそ出来たこと。86分と短めですが、いい映画。おススメです。
主演の二人は現役のミュージシャン、監督も元はプロのベーシストだそうです。劇中で二人が歌う「フォーリングスローリー」はアカデミー賞歌曲賞受賞。サウンドトラックはグラミー賞にノミネート。
そういえば主役の2人には役名が無かったことに、見終わったあと気づきました。
- アーティスト: サントラ,グレン・ハンサード,マルケタ・イルグロヴァ
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2007/10/17
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もっと古いけど、アイルランドの音楽映画といえばこれも外せないですね。ザ・コミットメンツ。バンドやろうぜ映画。なんとONCEの彼もメンバーの一人として出ていたんだとか。
これはかつて、デートというもので見ました。公開当時はヴォーカル役の人が16歳というのが話題になりましたけど、女性コーラス三人組も良かったですよ。destination any where。バンドが始動して夢と希望に溢れてる時、バス、電車だったかな、その中で誰とはなしに歌い出すんですよね〜、いいシーンだった。
- アーティスト: サントラ,ザ・コミットメンツ
- 出版社/メーカー: MCAビクター
- 発売日: 1991/09/21
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声がいい。
グレゴリー・ポーターの「スウェーデン ポーラーミュージックプライズ」でのパフォーマンス。
スティングの受賞セレモニーでの歌唱は、ロイヤルストックホルムフィルハーモニー管弦楽団をバックに。いいね〜
こちらはTVショウ「ジュールズ倶楽部」 でパープルレインを。いいわ〜
Gregory Porter & Guests - Tribute to Prince - Purple Rain - Later... with Jools Holland - BBC Two
フムフム。
Gregory Porter - 1960 What? - Official Music Video
帽子、帽子だけど。ダニーハサウェイを思い出します、ちょっとだけ。
- アーティスト: グレゴリー・ポーター,Buried In Black,ロイストン・タン,チップ・クロフォード,アーロン・ジェームス,エマニュエル・ハロルド,カーティス・テイラー,ティヴォン・ピニコット,Yosuke Sato,グレン・パッチャ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2014/08/13
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星のクライマー
冒険家植村直己さんがマッキンリー冬季単独登頂に成功した後、消息を絶ったのは1984年の2月の事でした(最後に無線の交信があった2月13日が命日とされています)
この歌は植村直己さんのことを、彼を待つ女性(妻)の視点からかかれたものだと言われています。作詞は松任谷由実さん。誰かに思いを馳せて、こんなに切ない歌詞が書けるなんて、さすがユーミンです。(作曲は麗美)
捜索が打ち切られた約二ヶ月後、植村直己さんは国民栄誉賞を受賞されています。あーそういえばそうだったと思い出すと同時に、今だったら難しいかもな、とも思いましたね。ああいうものに厳格な基準があるのか知りませんが(植村さんは五大陸最高峰登頂という偉業を成し遂げた方ですからじゅうぶん当てはまると思うのですが)もし今同じことをやった人がいても、その後遭難して捜索されたりしたら、そのことだけで批判を浴びてしまいそうな気がします…
懸命な捜索がまだ続いていた当時でしたか、直己さんのお父様のコメント
「倅は、お国にもご近所にも、なんの役にも立たんことをして、こんなに心配していただいて申し訳ない」
当時の報道は偉大な冒険家を悼み功績を讃える論調で、前人未踏の何かをやること(やろうとすること)に対するリスペクトはあっても、遭難したことに対する批判はあまりなかったように思います。
植村直己つながりで。
第22回植村直己冒険賞を受賞した荻田泰永さん。書籍もトークも面白かったです。
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Nanci Griffith「other voices other rooms」(アルバム)
長田弘 著「アメリカの心の歌」
著者の好きな、60、70年代のフォーク、カントリーミュージックについて書かれた本ですが、アーティストの評伝としても、とっても読み応えがあります。「歌と人と時代背景」を教えてくれるだけでなく「読み物」として大変面白い。
デイヴィッド・アラン・コー、ウェイロン・ジェニングスなんてアウトローなシンガー達はカントリーに詳しい人でなければ知りようがなく…私がまさにそう(無知)でしたが、読むと、そのアーティストの歌を(一度は)聴いてみたくなる、そんな本なのです。
ナンシー・グリフィスのこともこの本で知りました。44歳という若さで亡くなったケイト・ウルフの曲を歌い継ぎたい、というのがこのアルバムother voices other roomsを作ったきっかけだったそうです。他の曲も(彼女が歌い継ぎたいと思っている)名曲ばかりで、いくつかには曲の作者がゲスト参加しています。
時間をかけて沁み入ってくる…静かな夜にぴったりです。
- アーティスト: Nanci Griffith
- 出版社/メーカー: Elektra / Wea
- 発売日: 1994/09/14
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アルバムタイトルはトルーマン・カポーティの小説(ナンシーが抱えている本がそうですね)
みすず書房からハードカバーも出ています。
「すべての見えない光」アンソニー・ドーア
遠く離れた誰かと
話ができるなんて
奇跡だということを、
僕らはすっかり
忘れてしまっている(アンソニー・ドーア)
お正月休みに読むぞ〜と張り切っていた長編小説です。予想外に手こずりました。なぜかと言うとストーリーの時代背景をちゃんと把握しないまま読み始めたから、日時が行き来することについていけなかったからです。途中から、頭だけで理解しようとするのをやめ、とりあえず最後まで読むんだと腹を括ると、いっきに読むことができました。
(作家池澤夏樹さんのレビュー 本書カバーより)
人生には自分で選べないものがたくさんある。たとえば、この小説の主人公であるマリー=ロールというフランスの少女は目が見えない。ヴェルナーというドイツの少年は大戦に巻き込まれる。悲惨とぎりぎりの彼らの運命をその時々に救うのは、貝殻や桃の缶詰、無線で行き交う声と音、いわばモノだ。それに少数の善意の人たち。遠く離れた少年と少女は少しずつ近づき、一瞬の邂逅の後、また別れる。波欄と詩情を二つながら兼ねそなえた名作だとぼくは思う。
この「一瞬の邂逅」に向かってストーリーは進んでいくのですが、途中からそれが「どこ」なのかというのが大体わかってきます。
もどかしいような気がしましたが、マリー・ロールとヴェルナーそれぞれの、一見静かにみえて徐々に時代に翻弄されていく日常に心を痛めたり、誰かが差し伸べてくれる善意の手にホッとしたり…
小さなエピソードがまるでミルフィーユのようにいくつも折り重なり、ストーリーに深みを持たせています。
そして予想していたところで「一瞬の邂逅」は訪れるのですが、それは想像以上に豊潤な空間で、読んでいて胸がいっぱいになりました。二人が離れ離れになった後のヴェルナーの顛末も鮮烈でまるで映画のシーンのように心に残っています。
全部読み終えてからすぐもう一度読み始めましたが、今度は戦況も時系列もスーッと入ってきます。そしてやっぱり同じところで胸がいっぱいになりました。自分の乏しい語彙で言い尽くせないのが惜しいです。現代の小説では稀有な「美しくてかなしい」物語だと思いました。
冒頭の新潮社のサイトでは著者のインタビュー記事を読むことができます。
listentomybluebird.hatenablog.com
さみしいものの唄い止まない 内田良平の詩
「いわし」
いわしの父子(おやこ)が
くたびれて
波に
打ち上げられて 死んじゃった
砂浜に
まっすぐに
背骨のばしてならんでいる
でも
泣いてやらなくて いいんです
これでいいのかもしれません
死んでいても 目の玉は まだ 青い海の色(詩集おれは石川五右衛門が好きなんだ)
内田良平、というと同名で明治時代の有名な政治運動家がいますが、この詩を書いた内田良平は昭和の俳優(1924ー1984)です。1963年工藤栄一監督映画「十三人の刺客」鬼頭半兵衛というのが当たり役だったそうです。私はリメイク版しか見てないのでわかりませんが、暴君に忠義を尽くす家臣(三池崇史監督版では市村正親)という役どころ。私のイメージではテレビの時代劇で悪役やってた人、です。越後屋の用心棒で一番腕のたつ人。(時代劇以外にも松田優作の探偵物語等に出ていたと思います)
その内田良平は同人誌に参加する詩人でもあったそうです。昭和のヒット曲に「ハチのムサシは死んだのさ」というのがありますが、その詞は内田の「ハチのムサシ」という詩が元になっています。
「ハチのムサシ」
ハチの
ミヤモトムサシは死んだんだ
とおい
山の奥の畑で
お日様と果し合いをして
死んだんだ
彼の死骸は
真っ赤な夕日に照らされて
麦の穂から
ポトリと落ちて
やっぱり 確かに死んだんだ
勝てなかったお日様や
優しく抱いてくれた土の上で
真っ直ぐな顔で
静かに
空を
むいていた
「いわし」 と似てますね…
詩集のあとがきで自ら「童謡を書いた」と言っているので子供向けに書かれたものなのでしょう。虫、魚、鳥、といった小さな生き物が主人公。しかし内田良平は決して彼らの生き様をコドモの目線に下ろしたりはしません。コオロギやタニシやムカデといった「ちいさきもの」が、ただ生まれ、流れに任せ、時には抗いながら生きて、死んでいく様を眺めるように詠うのです。詩集の根底に一貫して流れているのは「誰でも、いつか死ぬ」この年代の男性特有のニヒリズムでしょうか。カッコつけすぎ…な気もしますけどね。昭和49年と(近代詩などと比較するとという意味で)微妙な古さを持った作品ですから、こういう「無頼と純情」の入り混じった作風は今の若い人にはしっくりこないかもしれません。いい詩があるんだけどなぁ…
「ちょうちょう 3」
絵の具でかいた羽根なんか
涙でのばしたひげなんか
お金でみがいた顔なんか
捨てちまお
雪が降ったら おしまい
猫なで声でおだてるな
ほんとの事を言っとくれ
それをきいたら
花のお墓に
たまった涙を捨てにゆく
今のところ作品集は全て絶版で古書でしか手にはいりません。まー、子供相手にシヌシヌ言ってるワケですから復刊は難しいのかもしれません。似たような詩が多いし。古書も稀少。プレミアついてて結構高かったりします。私がこの人の詩に出会ったのは中学生のとき。図書館にあったボロボロの詩集でした。その時は(越後屋の用心棒は詩も書いてたのかー)と思っただけですけどね。大人になってまた読む機会に恵まれましたが、あとがきに印象深い文章がありました。
子供だって、この世で生活しているなま身の人間だ。生活からうける苦しみ、憎しみ、悲しみも、わたしたちと同じように味わっているはずだ。センチメンタルな夢物語で、がまんさせられるほど、子供たちは愚かではない。子供たちを甘くみていると、いまに大きなシッペ返しを食うにちがいない。
立派な大学で教育された人達ばかりで固めた一流企業が、庶民に告発されるようなことを平気でしている集団となっている例がしばしばあるが、このシッペ返しの一つだと言えなくもない。
これそのまま今に通じることですね。
内田良平は、T・Sエリオットが遺言で、自分の伝記が書かれることを禁じた、という話に共感しています。作品を論じるのに人間性を持ち出すとややこしくなると。
(それ、半分は本音だとおもうけど、半分は照れ隠しなんじゃないですか?)
放蕩無頼の童謡詩集…強がりの純情派が遺したもの。