感想・ 羊と鋼の森(宮下奈都)

今週のお題「読書の秋」

同じ著者のエッセイ「神様たちの遊ぶ庭」を先に読んでいた。それは著者が一家で一年間北海道トムラウシへ移住した体験記で、私も都会から田舎へ引っ越し僻地で子育てをしたことがあるのでとてもとても共感できた。書けない本音もあったと察するが、行間に滲む親としての思いも汲み取ることができた。もっと早く出会いたかった本。

羊と鋼の森」の主人公の青年は、典型的な山の子だ。私には、彼のすがたが、自分の子どもや仲良くしてくれた地域の子ども達とオーバーラップして見えた。学校、保護者、地域の人たちと豊かな自然に見守られ、本当に子供らしい子供時代を送ってきた子…。

意図的ではないが結果的に純粋培養になってしまった子どもは、善意だけではない社会にとき放たれた時、ちゃんと波に乗っていけるのだろうか…少し心配しながら私はそこでの数年間子どもを育てた。僻地という、生活のあらゆる場面、選択肢がほぼないという環境で育った子は、自覚はないだろうけど、素直すぎるくらい素直で、歯痒いほど欲がない。

でも、意外とうまくやっていけるものなんだなぁ。真っ直ぐ成長して、真っ当な人間に、ちゃんとなっている。

この小説は、いつかは広い世の中へと巣立っていくであろう、トムラウシや同じような僻地の子ども達への、宮下さんからの「だいじょうぶだよ」という〝エール〟でもあるのかな、と感じた。

 

羊と鋼の森

羊と鋼の森

 

 

 

神さまたちの遊ぶ庭

神さまたちの遊ぶ庭