コロンバ

 

青 (百年文庫)

青 (百年文庫)

 

 

十五歳の夏休み、都会から海辺の村にやって来た「私」の前に、幼馴染みだった少女が一人前の娘になって現れた。思春期の淡い恋を描く、堀辰雄の『麦藁帽子』。いつまでも仲良しでいようと誓い合った二人の少女。だが、久しぶりの再会が、それぞれの心に微妙なずれを生じさせていく(ウンセット『少女』)。「ぼくは誰とも結婚なんかしないよ」。失恋し、傷心で帰郷したアントニオだったが、美しくひたむきな田舎娘コロンバに出逢い、思いがけず愛の情熱を知る(デレッダ『コロンバ』)。ほろ苦く甘美に押し寄せる、遠い日の記憶。

 

 

青は「青い果実」って言葉が表すような、未成熟、って意味かな。

成熟への過程は、時には残酷。過ぎた日には戻れないから、失うことでしか気づけないことがあって、その記憶は傷跡のように、薄れることはあっても消えることがない。

 

「麦藁帽子」は初恋のノスタルジー。「子ども」が「少年」と「少女」へ分かれていくことが鮮やかに描かれているな、と思った。

 

「少女」女同士のマウンティングって、こういうとこから始まるのかもしれない…。あ、いや、そんな下品な話ではないのですよ。女の子あるある な話。でも、この二人は、まわりまわって(いろんなことを呑み込んだ上で)いつか、また仲良しになりそうな予感がしました。それは「子猫がじゃれ合うような仲だったあの頃」とは違うかもしれないけどね。

 

「コロンバ」これが一番ドラマチックといえばドラマチックな話だったけど、どうも解せないのが、男がちっとも魅力的じゃないのね。ちっちゃい男なのよ。なぜあいつに惚れたコロンバ…

コロンバは美人で賢く気立てのいい子。そのコロンバが「あなたは私の太陽」とまで言い切るアントニオは、都会で教師をしている男で、女に振られて傷心の里帰りをしていた。そこでコロンバと出会う。コロンバが自分に気があることをわかっていながら、疑ったり、計算したり、秤にかけたりするわけ。コロンバはアントニオの心を全部見抜いてて、あなたがそう思っていても私はあなたが好きなのよ、と言える素直さがある。真夜中に人目を忍んでデートをした二人は結婚の約束をするのだけど、コロンバは、アントニオ自身も気づいていない彼の心の裏側に、一足早く気づいたのですね。そして彼女が出した決断は悲しいほど正しかった。馬鹿なアントニオ。遅いのよ。