クリスマスの思い出


チキンライス / 浜田雅功と槇原敬之

私の親は 子どもが欲しがるものを買い与える ということをほとんどしない人達だった

ちいさいうちに贅沢を覚えたら大人になってから苦労する  

というのが理由らしかったが

理由の半分は

金銭的な余裕がなかったからなのだと思う

それでも

最低限のことはしてくれたし  私に希望通りの進路を選ばせてくれたのだからとても感謝している

 

そんな子供時代

一度だけ クリスマスプレゼントをもらったことがある

 

朝起きたら弁当箱ほどの包みが枕元にあった

開けてみると  鮮やかなキミドリ色をした

四角い目覚まし時計だった

 

文字盤のところに

(田舎では)放送されていなくて 名前もわからない

巨大ロボットアニメのキャラクターのイラストが描いてあった

もしかしたら、その頃はもう放送されていなかった昔のアニメだったのかもしれない

 

多分母は近所の時計屋に行って

財布の中身と相談しながら

その時計を選んだのだろう

毎朝

母が何度起こしても起きない私に

もういい加減 一人で起きてくれよ という切なる願いと

予算の都合…

田舎に一軒しかない雑貨屋 件 時計屋のショーケース

という 選択肢から選ばれたその時計

その選択肢の前では

私が

一応女の子で ロボットアニメは全然好きじゃない

という事実は霞んでしまったのかもしれない

 

私も今は

「主婦」とか「妻」とか「お母さん」をやっているので

そのとき その時計を選んだ母の気持ちは

痛いほどわかる

 

そして 欲しいものを買って貰えずに育った

自分の子供時代の

諦めとか遠慮とか

それを思い出すと

自分の子どもには ついつい甘くなってしまう

 

私のお母さんは偉かったなぁ

 

「チキンライス」を聴くと

どうも 切なくなって

涙がこぼれそうになる

 

それは

子どもの頃の自分と

あの時の母の気持ちの

両方に感情移入してしまうからなんだろう