生活の詩(うた)

大きなやかんを

空のまんなかまでもちあげて

とっくん とっくん 水をのむ

とっくん とっくん とっくん とっくん

のどがなって

にょろ にょろ にょろ つめたい水が

のどから むねから いぶくろへはいる

(中略)

どうして こんなに 水は うまいもんかなあ

こんな水が なんのたしになるもんかしらんが

水をのんだら やっと こしがしゃんとした

ああ 空も たんぼも

すみからすみまで まっさおだ

おひさまも たんぼのまんなかに

白い光を ぶちまけたように 光っている

遠いたんぼでは しろかきの馬が

ぱしゃっ ぱしゃっと 水の光をけちらかしている

うえたばかりの苗の頭が風に吹かれて

もう うれしがって 伸びはじめているようだ

さっき とんでいったかっこうが

村の あの木で 鳴きはじめた

(水   大関松三郎詩集「山芋」より)

 

〝空のまんなかまでもちあげて〟って、が絵が浮かんできますね。視点が移っていく様子が好き。

大関松三郎詩集 山芋

大関松三郎詩集 山芋

  • 作者:大関 松三郎
  • 出版社/メーカー: 百合出版株式会社
  • 発売日: 1951/02/10
  • メディア: 単行本
 

 

大関松三郎(1926-1944) 新潟県出身。18歳で戦死。1951年小学校の恩師の手により遺稿を集めた詩集「山芋」が出版された。

 

夕日にむかってかえってくる

川からのてりかえしで

空の はてからはてまで もえている

みちばたのくさも ちりちりもえ

ぼくたちのきものにも 夕日がとびうつりそうだ

いっちんち いねはこびで

こしまで ぐなんぐなんつかれた

それでも 夕日にむかって歩いていると

からだの中まで夕日がしみこんできて

なんとなく こそばっこい

どこまでも歩いていきたいようだ

遠い夕日の中に うちがあるようだ

たのしいたのしいうちへ かえっていくようだ

あの夕日の中へかえっていくようだ

いっちんち よくはたらいたなあ  

(夕日  大関松三郎詩集「山芋」より)