Merle Haggard 「Mama Tried」
ちょうど2年前に亡くなったカントリー歌手マール・ハガード。
若い時は大変な不良だったそうで刑務所への服役経験もあります。マールの父は彼が幼い時に亡くなり母親は女手一つで彼を育てました。
mama tried という歌があります。
覚えている。最初に知ったのは、風に流れて行く汽車の孤独な汽笛だ。幼い時からの夢、大きくなったらきっと貨物列車に跳び乗って、町を離れて、どこか知らないところへ行く。誰にも止めさせやしない。けれども、ママはやめさせようとした。
辛抱強く穏やかな家族に一人だけ背いた子ども。(ぼくの押し入った)店で起きることを、ママは知っていたのだと思う。悪に対し日曜学校でまなんだことを打っちゃって、何もかもぼくはひっくりかえし続けたのだ。ママの手に負えなくなるまで。そして出番のない人生をやり過ごして、監獄のなかで、ぼくは21歳になった。
誰もぼくを正しいほうへみちびくなんてできなかった。けれどもママはみちびこうとした。もっとましな人間にしようとした。しかしママの願いを、ぼくは踏みにじった。とんでもない重荷をママに遺して逝った父よ、安らかれ。ママは父の代わりを果たそうとした。休みなく働いて、一番いいものをぼくにもたそうとした。ママはぼくを正しいほうへみちびこうととした。踏みにじったのはぼくだった。
出所後にデビューしてヒット曲を出し、服役経験をカミングアウトしてもファンが減らなかった…古い時代のこととは言え日本では考えられない事ですよね。
マールハガードについてはこの本の中に詳しいエピソードが載っています。
sing me back homeという歌のモデルとなった、親しかった囚人とのエピソードはなかなかにドラマチックです。
いっぱしの悪党気取りで犯罪を繰り返した若き日のマール。仲間と商店に押し入って逮捕、収監されたのは泣く子も黙るサンクエィンティン刑務所でした。
そこでマールは、本物の極悪人がどういうものかを思い知り、震え上がります。
まだ若いマールに優しくしてくれた年上の囚人がいました。兎というあだ名の彼と家具を作る作業をしていたマールは、ふと思いついた脱獄のアイデアを口にします。兎は「おまえは歌うたいになるんだ。歌が巧く、歌が作れて、ギターの腕はとびきりだ。いつかひとかどのやつになれる。俺は30歳だ。(脱獄のアイデアは俺に譲ってくれ)」…そして兎は脱獄を実行しますが、あっという間に捕まって、今度は死刑判決を受けます。
死刑囚は北東の最上階に収監され、マールは毎日その小窓が見える場所に立ちました。窓から兎の影が見え、手を挙げる…その挨拶が死刑執行直前まで続きました。
長田さんの男前な文章と、歌詞の意訳(引用) が素晴らしい。
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