犬やねこが消えた 戦争で命をうばわれた動物たちの物語

 

犬やねこが消えた―戦争で命をうばわれた動物たちの物語 (戦争ノンフィクション)

犬やねこが消えた―戦争で命をうばわれた動物たちの物語 (戦争ノンフィクション)

 

 

あなたは、犬や猫を飼っていますか?もし、その犬やねこと急に引きはなされてしまったら?これは、第二次世界大戦の末期に、本当にあった、飼い犬や飼いねこの供出のお話です。どんなことがあったのでしょう。いっしょに、過去を調べる旅に出てみませんか?

 

 

 

児童向けのノンフィクションです。

 

著者は、飼い犬の散歩中、老齢の女性から声をかけられます。

「今はいい時代ですね。こうして飼っている犬と一生いっしょにいられるのですから。」

「え?一生いっしょにいられるってどういう意味ですか?」

「子どものとき、兄弟のように暮らしていた犬を、戦争で死なせてしまったのです。お国のためにと、供出させられ、殺されたのです。」

 

戦争時、動物園の猛獣が空襲で逃げ出したら危険だから、食料不足だから、という理由で殺された話はよく知られているけど、ペットとして飼われていた身近な動物までが、なぜ殺されなければならなかったのだろう?

疑問に思った著者は取材を開始します。この女性と、警察官として供出させる側にいた男性から証言を得、一冊の本を書き上げます(犬が消えた日)。

 

しかし、軍用馬、軍用犬、食料と毛皮用のウサギに関する記録はあっても、犬や猫の供出に関する公式の記録、写真は全く無い。まるで意図的に誰かが破棄したかように…

著者は、戦時下の動物について取材をしていたNHKのキャスターととともに真相を探っていきます。

そして戦時中の新聞記事から1944年12月15日付、軍需省から

寒い戦地に赴く兵隊のための防寒着に毛皮を利用する

狂犬病の犬をなくす

犬が空襲で暴れたら危険

という理由で飼い犬を供出させる、という通達があったことを突き止めます。

 

この通達を入り口としたラジオドキュメンタリー番組のため、著者はまた取材を始めます。

 

「いい仕事があるよ」内容を知らされないまま作業小屋へ連れてこられた、当時15歳だった男性。犬や猫を撲殺し、皮を剥ぎ、皮をカマスに放り込んで塩をまぶす。町や村を毎日移動しながらの作業。家に帰ることは許されなかった。休みの日もあったがどこに行く気にもなれず、体を縮め布団にくるまっていた。気が休まる日はなかったが

「俺は国のために働いているんだ。好きで殺しているわけじゃない」

と口に出して言ってみると、犬や猫を連れてきた人と目を合わせられるようになった……

 

↑この辺が、戦争っていうものの、怖いところですよね。ごく普通の人が、平常心でいられなくなる、恐ろしいことができるようになってしまうって。

この男性は一ヶ月以上家に帰ることができませんでした。最後の日には眩暈を起こし倒れてしまいます。家に帰っても自分が何をしてきたか、家族に話すことはできなかったそうです。そして60年以上たっても未だこのことを夢に見て後悔の気持ちに襲われると語っていました。

 

 

自分の猫が撲殺される、その断末魔の叫びを聞いた少女もいました。

 

頑として命令に従わず犬を護った人もいました。

 

 

 

この本は2008年に出たものです。ペットの供出について、そして戦争そのものについても、証言できる人は今、本当に少なくなっています…

 

これに限らず、戦争を体験した人の本を、たまには読んでみませんか。

 

下の二冊は自分が小学生の頃読んで心に残っているものです。

 

戦艦武蔵のさいご (ノンフィクション・ブックス)

戦艦武蔵のさいご (ノンフィクション・ブックス)

 

乗員だった男性の手記。一乗員として自分が体験したことを語っています。とくに、攻撃を受けてから沈没するまで、甲板上の酸鼻を極める状況の描写には、言葉を失いました。

 

ガラスのうさぎ (フォア文庫)

ガラスのうさぎ (フォア文庫)

 

1945年3月10日の東京大空襲で母と妹を失い、のちに父が機銃掃射で命を落とすのをみた。少女時代の体験をつづったノンフィクション。